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JSOについて

上の前歯が出ているお子さんのための
矯正治療ガイドライン

一般社団法人 日本歯科矯正専門医学会(JSO)診療ガイドライン統括委員会編
初版 2016月9月

診療ガイドラインとは

医療者と患者が適切な診療の意思決定を行うことを助ける目的で、科学的根拠を基に、系統的に作成された指針です。

患者さん向けやさしい解説は

日本において歯科矯正治療を行う歯科医師向け診療ガイドラインをもとにつくられ、Minds(厚生労働省からの委託を受け、日本医療機能評価機構が運営する医療情報サービス)に掲載予定です。

患者さん向け診療ガイドライン

Q.1 うちの子どもは上の前歯が出ています。矯正治療を始める時期は、早ければ早いほうが良いのでしょうか?

A.1 早ければ早いほうが良いということはありません。

早期矯正治療の確実な有効性は確認されていません。ただし早期矯正治療が有効な患者さんが全くいないというわけではありません。
また、6歳以下の患者さんについても、確証のある研究や報告はありません。

早期矯正治療に有効性があるかどうかはどのように調べたのか

下図①および②の治療経過をたどった患者さんたちの、永久歯列期の矯正治療が終了した16歳以降で比較検証を行っています。
結果「早期治療を行わなくても、最終的には同じ結果が得られた」

治療例の比較検証

早期矯正治療直後

早期矯正治療直後には、早期矯正治療の治療効果は確認できます。上の前歯が少し引っ込んだ、 上あごが前へ成長していくのを抑えた、下あごが大きくなったなどの報告があります。

永久歯列期治療後

しかしその後、永久歯列期の矯正治療を行ってから、早期矯正治療を行わず永久歯列期の矯正治療を行った患者さんと比較検証すると、早期矯正治療の治療効果は確認できません。上下の前歯のかみ合わせや、上あご・下あごの大きさに、差は認められていません。

早期矯正治療の効果

早期矯正治療の効果として、上の前歯の外傷発症率が低減されることは確認されています。ほとんどがエナメル質に限局した軽微な外傷ですが、約40%軽減するという結果です 。

Q.2 上の前歯が出ている子どもは、永久歯が生えそろうまでは、矯正治療を行わないほうが良いということでしょうか?

A.2 行わないことを強く推奨します。

早期矯正治療は、すべて効果がないということではありません。有効な患者さんもいます。歯科医師は、必要十分な検査をしたうえで、早期矯正治療の有効性が確実であると診断した場合、早期矯正治療を行うことを患者さんに提案します。

しかし、現状で注意が必要な点として、科学的根拠のない理論により、すべての患者さんに画一的な早期矯正治療を行っている歯科医師が存在することがあげられます。

また、なんら検査を行わず、既製品(できあい)の装置を安易に使用する歯科医師も存在します。そのような歯科医師の行っている早期矯正治療は注意が必要です。

矯正治療開始前に最低限行うべき必要な検査

レントゲン写真(頭部・側面)

矯正専用のレントゲン。
歯、あご、口元の関係などを見ます。

レントゲン写真(パノラマ)

むし歯や歯周病、歯の生え変わりなどを見ます。

顔写真・口腔内写真

顔、歯、口元のバランスなどを見ます。

歯列模型

上下のかみ合わせや歯の並びをいろいろな角度から見ます。

Q.3 その他のかみ合わせの場合、早期矯正治療の効果はありますか?

A.3 確証のある研究や報告はありません。

早期矯正治療の有効性は、患者さんによっても、かみ合わせの種類によっても違いがあります。十分な検査、診断、説明を受け、納得したうえで治療受けてください。

早期矯正治療をすすめられた患者さんへ

「乳歯の虫歯の治療になにげなく訪れた歯科医院で、“なんでこんなに上の前歯が出ているのに放っておいたのですか?
このままでは手遅れになってしまいます”と言われました」

「子どもに矯正治療を受けさせていますが、いつまで治療を続けたら良いのか説明もなく、いつ終わるのか分からず不安です」

「早期矯正治療を行いましたが、治らないので、“大人の歯を抜いて永久歯列の矯正治療が必要です”と言われました」

「早期矯正治療を受け終えた子どもは"もう一度するのはイヤだ"と言い、上の前歯が出た状態は変わらず、時間とお金も全て無駄、何のための治療だったのだろうと後悔しています」

このガイドラインは、このようなことが起こらないために、上の前歯が出ているかみ合わせの早期矯正治療をすすめられた患者さんのために作成しました。

矯正歯科を標榜している歯科医院でも注意が必要

歯科医院の数が増え、子どもの虫歯の数が減少しているため、歯科医院の経営は厳しいのが現状です。自費診療の矯正治療は、そんな歯科医院の大きな収入源になっています。

矯正治療を行う歯科医師は増える一方で、かみ合わせや歯並びに問題があれば、すぐに矯正治療の開始を提案する傾向があります。

しかし、たとえ矯正歯科を標榜している歯科医院でも、必ずしも歯科医師に矯正治療に関するきちんとした知識や技術があるわけではなく注意が必要です。
すべての患者さんに同一の治療を行うことはあり得ませんし、早期矯正治療を行ったからといって、永久歯を抜かない矯正治療が必ず可能になるわけではありません。

迷ったらセカンドオピニオンの活用も

早期矯正治療を受ける際は、必要な検査を受け、治療方法、治療期間、治療費、永久歯列期の見通しなどについて事前に詳しい説明を受け、十分納得したうえで早期矯正治療を開始してください。迷った際は、セカンドオピニオンの活用もおすすめします。

この診療ガイドラインは、患者と医療者の判断を科学的な根拠をもって支援する目的で、ランダム化比較試験など信頼性の高い論文を検索し、矯正歯科専門家だけでなく、矯正治療を受けた患者さん、医療ジャーナリストの参加を得て推奨の程度(GRADE評価)を協議・決定しました。

診療ガイドラインは医療者の経験を否定するものではありません。また診療ガイドラインに含まれる内容は、必ずしも個々の患者さんの状況に当てはまるとは限りません。
診療ガイドライン「上顎前歯が前突した小児(7歳から11歳)に対する早期矯正治療は有効か?」は、日本医療機能評価機構・医療情報サービスMinds(http://minds.jcqhc.or.jp/)に掲載予定です。

また一般社団法人日本歯科矯正専門医学会(JSO)、日本矯正歯科協会(JIO)のホームページからダウンロードすることができます。http://www.jso.or.jp

歯科医師向け診療ガイドライン

CQ(クリニカルクエスチョン)

上顎前歯が前突した小児(7歳から11歳)に対する 早期矯正治療は有効か?

推奨

上顎前歯が前突した小児(7歳から11歳)に対し、 早期矯正治療を行わないことを強く推奨する。
(GRADE 1C:強い推奨/ エビデンスの質「低」)論文検索:2014年12月4日

*参考文献 : Thiruvenkatachari B, Harrison JE, Worthington HV, O'Brien KD. Orthodontic treatment for prominent upper front teeth (Class II malocclusion) in children. Cochrane Database Syst Rev, 11:CD003452, 2013.
GRADE : Grading of Recommendations Assessment, Development and Education
推奨の強さは1=「強い」,2=「弱い」の2分類 エビテンス(科学的根拠)の質 A=「高」, B=「中」, C=「低」, D=「非常に低」の4段階

【JSOのご紹介】JSOの概略、理念や定期的に開催するJSO市民公開講座をご紹介します。