100 症例審査の意義についてご説明します。
日本の矯正医療の質を向上するために、JBOは臨床能力を審査するシステムが必要と考えました。
現状の矯正医療の課題
矯正歯科治療は、一般の虫歯治療などの歯科とはまったく異なる医療であることはお解りいただけることと思います。矯正治療は高い専門性が必要とされ、また治療に年単位の時間がかかるという特殊性の高い医療です。そのため、一般の歯科治療の技術とは別に、矯正治療の専門技術が必要となります。
欧米諸国では、歯科大学卒業後に矯正領域の専門教育を受け、資格試験を受けて矯正医になるというシステムが確立されています。しかし日本ではそういったシステムが確立されておらず、歯科大学では矯正に関する部分的な知識を修得するのみで、歯科医の資格があれば誰でも矯正治療が行えてしまうという現状があります。
これにより、技術において様々なレベルの矯正医が存在し、十分な技術のない歯科医師によって不適切な治療が行われたり、患者さんの望むものと異なる治療結果になる、などの問題が起きています。
臨床能力を審査
JBOでは、このような現状を改善するために、矯正歯科臨床能力を審査するシステムが必要であると判断し、歯科矯正医の認定制度を設けました。
認定審査にあたって、何よりも重視するのは、実際の矯正臨床経験です。
いくら一般の歯科治療の腕が確かな歯科医師であっても、矯正治療の経験が数例しかないのであれば、矯正医としての能力は不十分と言わざるを得ません。JBOの設けた100症例の治療リスト提出というのは、その歯科医師の矯正臨床経験が問われることであり、極めて高いハードルです。
100症例の中には、症例や治療法など偏りなく様々なものが含まれている必要があり、また、その中から実際に審査される5症例は、申請者が選ぶのではなく審査委員が選択します。つまり、その歯科医師の得意な治療法や、良くできた治療結果の症例を選べるわけでなく、100人の患者さんに対する治療すべてが確実なレベルに達していなければならないのです。
このような厳しい基準による審査システムであるからこそ、JBOの認定医は患者さんに対して適切な治療を行うことができるという、患者さんから安心と信頼を持っていただけるものと考えています。
提出症例数が少ないと・・・
1.臨床経験が少ない歯科医師でも臨床の経験豊富な矯正医として認定される
たとえば、審査を受けるために必要な症例数が10件だとすると、極端な話、矯正治療を始めたばかりの歯科医師が5年の間に10件の治療経験しかなくても良いことになります。
2.良い結果の症例、得意な症例だけを自分で選んで審査を受けられる
100症例の治療経験はあるけれど、成功症例は10件だけ・・・というような歯科医師であっても、良い結果のものだけを選んで審査を受けることができてしまいます。
100症例中5症例審査だと・・・
1.最低でも100症例の治療実績が担保される
100名の患者さんを治すことができないと、審査を受けることができません。少なくとも「100症例を治した」という実績が担保されます。
2.偏りのない症例審査が行われる
どの症例について審査が行われるかは、審査委員が決定します。審査を受ける矯正医自身が自分に有利な症例を指定することはできません。